朝起きて、スマホで証券アプリを開く。昨日+2%だったポートフォリオが、今日は-1.5%になっている。

「あのとき売っておけば…」「今のうちに損切りしておくべきか?」

そんなことを考えながら、電車の中でもチャートを見つめる。気がつけば、1日に何度も株価をチェックしている自分がいる。

こんな経験、ありませんか?

私たちは「何かしなければ」という焦りに駆られがちです。でも、投資の世界には「待つ」ことの価値を説いた、ある名言があります。

チャーリー・マンガーが遺した言葉

“The big money is not in the buying and selling, but in the waiting.”

「大きなお金は売買にあるのではなく、待つことにある。」

この言葉を残したのは、チャーリー・マンガー。バークシャー・ハサウェイの元副会長であり、ウォーレン・バフェットの長年のパートナーとして知られています。2023年11月に99歳で亡くなるまで、多分野にわたる知識を投資に活かす「メンタルモデル」を提唱し続けました。

バフェットが「私の右腕」と呼んだマンガーは、単なる投資家ではありません。建築、法律、心理学、数学…あらゆる分野の知識を組み合わせて判断する、真の知識人でした。

このテーマの全体像をつかみたい方は、まずこちらをご覧ください。 投資名言から学ぶ心理戦略|世界の賢人に学ぶ投資の知恵

この名言の深い意味とは?

表面的には「長期投資が大切」という意味に聞こえます。でも、マンガーの真意はもっと深い。

…いや、正直に告白すると、私も最初はそう思っていました。「ああ、長期投資の重要性を説いているんだな」と。

でも、実際に投資を続けてみて気づいたんです。この名言の本当の意味は、「何もしない勇気」について語っていることを。

投資で一番難しいのは、売買の判断ではありません。「今日は何もしない」という判断です。

市場が上昇しているとき、「乗り遅れるな」という声が聞こえてきます。下落しているとき、「損失を確定させろ」という声が聞こえてきます。でも、マンガーは言うんです。「待て」と。

なぜか?

人間の脳は「行動しないことによる後悔」を「行動することによる後悔」より重く感じるようにできています。これを心理学では「作為バイアス」と呼びます。つまり、私たちは本能的に「何かしたがる」生き物なんです。

でも、投資においては、この本能が邪魔をする。

関連して、こちらの記事も参考になります。 チャーリー・マンガーの「逆転思考」が教える投資の本質とは?

実際の投資でどう活かすか?

具体例を考えてみましょう。

あなたがトヨタ株を3,000円で100株購入したとします。購入理由は「安定した業績」「今後の電動化への対応」「適正な株価水準」。

ところが、購入から1ヶ月後、中国経済の減速懸念で自動車株が軒並み下落。トヨタも2,700円まで下がりました。含み損は3万円です。

この時、多くの人が考えることは:

  • 「もう少し下がるかもしれない。今のうちに売ろう」
  • 「他の銘柄に乗り換えた方がいいのでは?」
  • 「せめて2,900円まで戻ったら売ろう」

でも、マンガーなら何と言うでしょうか。

「購入理由は変わったのか?」

トヨタの業績が悪化したわけではありません。電動化への取り組みが止まったわけでもありません。変わったのは「株価」だけ。それも、トヨタとは関係のない外部要因で。

であれば、答えは「待つ」ことです。

(これが一番難しいんですけどね…)

よくある誤解:「何もしない=怠け者」ではない

この名言でよくある誤解は、「投資は放置しておけばいい」という解釈です。

マンガーの言う「待つ」は、決して「何も考えない」ことではありません。

  • 購入した企業の業績は定期的にチェックする
  • 業界の動向にアンテナを張る
  • 購入理由が崩れていないか検証する

これらは全部やる。でも、「株価が下がったから売る」「上がったから利確する」のような条件反射的な売買はしない。

つまり、頭は使うけど、手は動かさない。これがマンガー流の「待つ」です。

実際、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオを見ると、コカ・コーラ株を30年以上保有し続けています。この間、ITバブル崩壊もリーマンショックもコロナショックもありました。でも、彼らは「待った」。

結果?コカ・コーラへの投資は元本の数十倍になっています。

今日からできる1つのこと

明日から、証券アプリを開く回数を数えてみてください。

1日に5回以上開いているなら、それは「待つ」ことができていない証拠かもしれません。

代わりに、こんなルールを作ってみませんか?

「株価チェックは1日1回、夜だけ」

朝の通勤時間やお昼休みは見ない。仕事が終わって、夕食後にゆっくりと確認する。

これだけで、日中の値動きに一喜一憂することが減ります。そして、「今日は何もしない」という選択肢が見えてきます。

マンガーの名言は、私たちに「投資の本質は忍耐にある」ことを教えてくれています。大きなお金は、売買のテクニックではなく、時間を味方につけることで生まれるのです。

投資名言の深い意味や実践方法については、投資名言から学ぶ心理戦略の完全ガイドでも詳しく解説しています。

マンガーの思考法をさらに深く学びたい方は、『完全なる投資家の頭の中』書評もおすすめです。「待つ」ための具体的な思考プロセスを学べます。


よくある質問

Q1: 「待つ」と言っても、どのくらい待てばいいのですか? A: 明確な期限はありませんが、少なくとも企業の事業サイクル1周期(3-5年)は見るべきでしょう。四半期決算の値動きに惑わされず、企業の長期的な成長を待つことが大切です。

Q2: 業績が悪化した場合でも待つべきですか? A: いいえ。マンガーの「待つ」は「何もしない」ではありません。購入理由(企業の競争優位性、経営陣の質など)が崩れた場合は、売却を検討すべきです。株価下落と企業価値の毀損は別物です。

Q3: この考え方は日本株にも当てはまりますか? A: はい。トヨタ、花王、信越化学など、長期的に競争優位性を持つ日本企業にも同じ原則が適用できます。NISA制度を活用すれば、長期保有の税制メリットも享受できます。

Q4: 「待つ」間に他の投資機会を逃すのではないでしょうか? A: これは機会コストへの不安ですが、良い投資機会は意外と少ないものです。マンガーは「素晴らしい企業を適正価格で買って待つ方が、平凡な企業を安く買うより良い」と言っています。

Q5: 暴落時も同じように「待つ」べきですか? A: 暴落時こそ「待つ」力が試されます。ただし、暴落の原因が一時的なものか構造的なものかを見極めることが重要です。パンデミックのような一時的要因なら待つ、業界全体の構造変化なら見直しを検討しましょう。