「なぜ、みんなが買っているから私も買ってしまうのだろう?」 「このまま上がり続けるなんて、冷静に考えればあり得ないのに…」

バブル真っ只中で、こんな疑問を抱いたことはありませんか?

2024年に日経平均が34年ぶりに最高値を更新し、「新NISA効果」で株式市場が沸き立つ今、改めて読み直したいのがロバート・シラーの『根拠なき熱狂』です。

この本は2000年、ドットコムバブルの絶頂期に出版されました。当時「インターネット関連株は絶対に下がらない」と信じられていた時代に、シラー教授は冷静にこう警告したのです。

「この熱狂には、根拠がない」と。

そして2001年、ナスダック指数は75%下落しました。

書籍情報

書名: 根拠なき熱狂(原題:Irrational Exuberance)
著者: ロバート・J・シラー
出版年: 2000年
出版社: ダイヤモンド社(日本語版)

このテーマの全体像をつかみたい方は、まずこちらをご覧ください。 投資本で鍛えるメンタル|必読書ガイド

この本を一言で

バブルは偶然ではなく、人間心理と社会構造が生み出す必然である。

関連して、こちらの記事も参考になります。 【投資本ノート】株で富を築く バフェットの法則 〜投資の神様の思考法を完全解剖

『根拠なき熱狂』から学ぶ3つのポイント

1. フィードバック・ループ:バブルが自己増殖するメカニズム

シラー教授が解明したのは、バブルの「自己増殖メカニズム」です。

フィードバック・ループとは: 株価上昇 → メディア報道 → 投資家の楽観 → さらなる買い → 株価上昇…

この循環が続く限り、バブルは膨らみ続けます。

実際の投資でいうと: 2024年の新NISA開始で「みんなが投資を始めている」というニュースを見て、「自分も始めなければ」と焦って口座を開設。結果的に高値掴みになってしまう——これもフィードバック・ループの一例です。

2. CAPE比率:割高・割安を冷静に測る指標

シラー教授が開発したCAPE比率(Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)は、過去10年間の平均利益で株価を割った指標です。

なぜ10年平均なのか? 単年の利益は景気変動に左右されるため、長期平均で「本当の企業価値」を測る必要があるからです。

実際の投資でいうと: 日経平均のPERが「20倍だから割高」と判断する前に、過去10年の利益水準と比較してみる。一時的な好業績に惑わされず、長期的な企業価値で投資判断を下すクセがつきます。

3. 文化的要因:時代の「物語」がバブルを作る

バブルには必ず「もっともらしい理由」があります。シラー教授はこれを「文化的要因」と呼びました。

  • 1920年代:「永続的な繁栄の新時代」
  • 1980年代後半:「日本の土地は絶対に下がらない」
  • 1990年代後半:「インターネットが世界を変える」

実際の投資でいうと: 「AI革命で株価は青天井」「新NISAで日本人の投資元年」——こうした「時代の物語」に完全に乗っかる前に、一度立ち止まって考える習慣がつきます。

物語が間違っているとは言いません。ただし、その物語が「根拠なき熱狂」を生んでいないか、冷静に見極める目が必要なのです。

印象に残った一節

「投資家は、価格上昇それ自体を、さらなる価格上昇の根拠と見なしがちである。この心理こそが、バブルの本質なのだ」

この一節を読んだとき、ハッとしました。

「最近この株、ずっと上がってるから買おう」——この発想、ありませんか?株価上昇の理由を探すのではなく、上昇している事実を理由にしてしまう。

まさに、私たちがやりがちな思考パターンそのものです。

シラー教授は、この心理的罠を「価格の正当化」と呼んでいます。人間は価格が上がると、後から「上がった理由」を探したがる。そして見つけた理由を信じ込んで、さらに買い続ける。

でも、よく考えてみてください。株価が上がったから買うって、高値掴みの典型パターンじゃないでしょうか?

読む前と読んだ後で変わること

読む前: 「みんなが買っているから安心。この銘柄、ずっと上がり続けている」

読んだ後: 「なぜ、みんなが買っているのか?この上昇に、ファンダメンタルな根拠はあるのか?」

具体的な変化として、私はこの本を読んでから、投資判断に「逆張りチェック」を入れるようになりました。

  • 周りが楽観的すぎる時は慎重に
  • メディアが連日「株高」を報じている時こそ警戒
  • 「今回は違う」という言葉が聞こえたら、一度立ち止まる

完全な逆張り投資家になったわけではありません。でも、群衆心理に流されそうになった時、シラー教授の声が聞こえてくるんです。

「その熱狂に、根拠はあるか?」と。

こんな人におすすめ

おすすめする人:

  • バブル相場で高値掴みした経験がある人
  • 「みんなが買っているから」で投資判断してしまいがちな人
  • 長期投資を実践しているが、短期の値動きに一喜一憂してしまう人
  • 2024年の株高で「このまま上がり続けるのでは」と期待している人

おすすめしない人:

  • すぐに使えるテクニカル分析を学びたい人(この本は心理・社会分析が中心)
  • 具体的な銘柄選びの方法を知りたい人
  • 数式や統計に拒否反応がある人(CAPE比率の計算など、ややアカデミックな内容も含まれる)

シラー教授はノーベル賞受賞者だけあって、論理的で厳密。でも、それが時として「理屈っぽい」と感じる読者もいるかもしれません。

今日からできる1つのこと

「なぜ?」を3回繰り返すクセをつける

投資判断をする前に、以下の質問を自分にしてみてください:

  1. なぜ、この銘柄を買おうと思ったのか?
  2. なぜ、その理由が正しいと思うのか?
  3. なぜ、今のタイミングなのか?

例えば: 「AI関連株を買おう」 → なぜ?「AIが流行っているから」 → なぜその理由が正しい?「ニュースでよく見るから」 → なぜ今?「みんなが買っているから」

…あれ?これって「根拠なき熱狂」じゃないでしょうか?

3つの「なぜ?」で、フィードバック・ループの罠から抜け出せるはずです。

FAQ

Q1: この本は2000年出版ですが、今でも参考になりますか?

A: むしろ今読むべき本だと思います。人間の心理は20年経っても変わりません。ドットコムバブル、リーマンショック、コロナショック…バブルと暴落のパターンは繰り返されています。2024年の日本株高局面だからこそ、シラー教授の警告は重要です。

Q2: CAPE比率は個人投資家でも計算できますか?

A: 基本的な計算は可能ですが、正確なデータ収集は困難です。幸い、現在は多くの金融サイトでCAPE比率が公開されています。計算方法を理解するより、「長期的な企業価値で判断する」という考え方を身につけることが大切です。

Q3: バブルを完全に避けることはできますか?

A: 不可能だと思います。シラー教授自身も「バブルの天井を正確に予測することはできない」と認めています。大切なのは、バブル的な値動きに完全に身を委ねないこと。分散投資と時間の分散(積立投資)で、バブルの影響を和らげることが現実的です。

Q4: この本を読むと、株式投資が怖くなりませんか?

A: 確かに、楽観的な投資はしにくくなります。でも、それが健全な姿勢だと思います。リスクを理解した上で投資するのと、何も考えずに投資するのでは、長期的な成果が大きく違います。怖がるのではなく、「賢く慎重になる」と捉えてください。

Q5: 日本のバブルについても書かれていますか?

A: 1980年代後半の日本のバブルについても分析されています。「土地神話」がいかに根拠のない熱狂だったか、当時の日本人の心理がよく描かれています。日本人読者にとって、特に身近で理解しやすい事例の一つです。


投資は心理戦です。市場と戦う前に、まず自分の心理的な罠と戦わなければなりません。

ロバート・シラーの『根拠なき熱狂』は、その戦いのための最良の武器の一つ。バブルの正体を知ることで、次の暴落を生き抜く知恵が身につきます。

株価が上がり続ける時代だからこそ、一度立ち止まって読んでみてください。シラー教授の冷静な分析が、あなたの投資判断に新しい視点を与えてくれるはずです。